9月の半ば。
少し遅めの夏休みのような気分で、奥さんとかふぅと軽井沢へ行ってきた。
今回の旅は、僕の誕生日旅行。
もちろん、かふぅも一緒だ。
でも、旅が始まったのは当日の朝ではなくて。
もしかすると、前日の夜からだったのかもしれない。
明日は、お出かけだぞ
前日の夜。
いつもなら寝る時間になっても、かふぅがなんだかソワソワしていた。
僕らが旅行の準備をしている空気を感じ取っていたのだろうか。
「明日はお出かけだぞ!」
そう分かっているようにも見えた。
そして翌朝。
一番早く起きたのも、やっぱりかふぅだった。
僕らの周りをピョンピョン跳ねたり、グルグル走り回ったり。
まだ?
まだ行かないの?
そんな声が聞こえてきそうなくらい落ち着かない。
出発前に散歩へ行って、トイレを済ませて、朝ごはんも食べた。
それでもソワソワは止まらない。
「夏は暑くて、あまり出掛けられなかったもんね。かふぅ、嬉しいね」
奥さんが、かふぅに話しかける。
そんな二人を眺めながら、僕はなんとなく我が家のいつもの風景を噛み締めていた。
まずは、軽井沢まで長いドライブ
予定より少し遅れて、8時前に出発。
高速道路を2時間ほど走って、狭山PAで最初の休憩を取った。

あれだけ出発前はソワソワしていたのに。
車に乗ってしばらくすると、この表情。
かふぅもここでトイレを済ませて、軽く散歩をする。
人間も犬も少しリフレッシュしたところで、再び軽井沢を目指した。
シルバーウィーク直前の平日。
それでも道はガラガラというわけではなく、最初の目的地に着いたのは自宅を出てから5時間ほど経った頃だった。
初めて歩く、旧軽井沢
到着したのは、旧軽井沢。
お昼時を少し過ぎた頃だった。
以前からYouTubeのライブカメラで何度か見ていた交差点を実際に見つけて、
「あ、ここだ」
と、ちょっと嬉しくなる。
そして車から降りて、もうひとつ驚いた。
寒い。
少し前まで関東では暑い暑いと言っていたのが嘘みたいに、軽井沢の空気はもう肌寒かった。
かふぅのカートを用意して、3人で歩き始める。

まず奥さんが見つけたのは、少し奥まったところにあるコロッケ屋さん。
奥さんはじゃがいものコロッケ。
僕はメンチカツ。
店主らしき方は少し無口だったけれど、注文してから一つひとつ揚げてくれる。
熱々を頬張れば、味は文句なしだった。
「これも食べてみな」
そのあと立ち寄ったのが、漬物屋さん。
最初にひとつ試食をさせてもらった。
すると、
「これも食べてみな」
「あれも食べてみな」
沢庵、野沢菜、キャベツ……。
次から次へと出してくれる。
途中から、
「これ、お店で頼んだら1,000円近くいってない?」
と笑ってしまうくらい、ご馳走になった。
奥さんは沢庵をかなり気に入った様子。
僕は野沢菜が欲しくなった。
ただ、このあともまだ歩く。
「帰りにまた来ます」
そう伝えて、一度お店をあとにした。
かふぅと歩く旧軽井沢
ミッフィーのお店にスヌーピーのお店。
パン屋さん、焼き菓子屋さん、雑貨屋さん。
気になるお店を覗きながら、通りの奥へと歩いていく。

犬連れの人も多かった。
当然、かふぅは大忙しだ。
あっちにワンちゃんを見つければ近寄っていき、
吠えられれば慌てて戻ってくる。
気になる匂いを見つければクンクンして、また少し歩いてはおしっこポーズ。
そろそろマナーウェアの貯水量が限界を迎えるんじゃないか。
そんな心配をしながらも、奥さんとかふぅと顔を見合わせて笑った。
ただ歩いているだけだった。
何か特別なことをしているわけでもない。
それなのに、ふと気がつくと。
僕はゆっくり流れていくその時間と、目の前の光景を眺めていた。
奥さんがいて。
かふぅがいて。
二人が楽しそうにしている。
「ありがとう」
気がつけば、そんな言葉が小さくこぼれていた。
たぶん二人には聞こえていなかったと思う。
でも、それで良い。
旅先では、なぜかもう少し食べたくなる
帰り道。
「お腹空かない?」
僕が聞くと、奥さんはさっきのコロッケもあって、そこまでお腹は空いていないらしい。
「何か食べたいなら付き合うよ」
と、いつもの優しい返事。
僕だってメンチカツを食べたばかりなのだけれど、旅行に来ると不思議と何か食べたくなる。
少し歩くと、道の左側に老舗らしい雰囲気のお店があった。
テラス席は犬同伴OKらしい。
「蕎麦はどうかな?」
店先のメニューを見る。
おすすめらしい「にしんそば」。
でも僕の目を奪ったのは、
「せいろ」
の3文字だった。
一方の奥さんもメニューを眺めた末に選んだのは、こし餡のおしるこ。
なんとも奥さんらしい。
思わず、ふふふと笑ってしまった。

料理が運ばれてきて、僕らが食べ始める。
そしてもちろん、かふぅにも。
持ってきたボーロをあげると、あっという間に平らげた。
もう一度、あの漬物屋さんへ
食事を終えたあとは、街を眺めながら来た道を戻る。
そして約束通り、さっきの漬物屋さんへ。
再びたくさん試食させてもらいながら、沢庵を二つと野沢菜の漬物を購入した。
こういう何気ないやり取りまで含めて、旅の思い出になっていく。
買い物を終え、車へ。
今度はこの日の宿へ向かった。
かふぅのためのドッグラン
駐車している間に奥さんがチェックインを済ませてくれて、そのまま部屋へ向かう。
部屋に入って、ちょっと驚いた。
木目を基調にした、おしゃれな空間。
普段の我が家とは違う雰囲気に、こちらが少し緊張してしまうくらいだった。
そして極端に広くはないけれど、部屋にはかふぅには十分なプライベートドッグランも付いている。
荷物を置いて、まずは宿のロビーの先にあるフォトスポットへ。

いい笑顔。
長いドライブ、お疲れさま。
貸切のドッグラン
そのまま共用のドッグランへ行ってみると、誰もいない。
貸切だ。
長旅を頑張ったかふぅのリードを外してあげる。
いきなり走り回るのかと思ったら、まず始まったのはクン活だった。
隅から隅まで、恐る恐る。
知らない場所をひとつずつ確認するように歩いていく。

そして安全だと分かったのか、だんだんテンションも上がってきた。
一緒に走って。
追いかけっこして。

楽しそうなかふぅを見ていると、奥さんも嬉しそうに笑う。
そして、その二人を見ていると、僕も笑っている。
相変わらずだ。
かふぅは今日も、僕らにたくさんの笑顔をくれる。
3人でウトウトした
ひとしきり遊んだあとは、夜に部屋で飲むお酒や飲み物を買いにコンビニへ。
せっかく軽井沢に来たのだからと、僕は地ビールを4本。
奥さんもお酒を2本選んだ。
宿へ戻ると、夕食まではまだ少し時間がある。
部屋でのんびりすることにした。
かふぅがウトウトし始めた。
そのうち奥さんもウトウト。
二人を眺めていた僕も、いつの間にかウトウトした。
3人でウトウトした。
旅行に来てまで昼寝。
でも、こういう時間が妙に幸せだったりする。
もう一度だけ、遊びに行こう
目を覚ますと、夕食まであと少し。
「ちょっと時間あるね」
ということで、もう一度ドッグランへ。
やっぱり誰もいない。
また貸切だった。
少しだけ追いかけっこをして、写真を撮る。
しばらくすると、中型犬を連れた親子がやってきた。
ちょうどいい時間だ。
僕らは入れ替わるようにドッグランをあとにして、レストランへ向かった。
今夜は、かふぅもご馳走
今回の夕食は和食。
和食好きの僕のために、奥さんが選んでくれたんだと思う。
でも。
最初に料理が運ばれてきたのは、僕でも奥さんでもなかった。
かふぅだ。

今回のかふぅの夕食には、信州プレミアム和牛付き。
チェックインの時に、奥さんと二人で選んだものだった。
「どれならかふぅが喜ぶかな」
「これは量が多いかな」
「夜と朝で半分ずつ出してもらえるらしいよ」
「じゃあ、それにしよう」
そんな会話をしながら決めた。
目の前に料理が運ばれてくると、お肉の匂いに気づいたのだろう。
鼻をクンクンさせながら、明らかに落ち着きをなくす。
でも、吠えない。
良い子だ。
僕らのところにも料理が運ばれてきた。
小鉢、茶碗蒸し、蒸し野菜、魚、そしてお肉。
どれも美味しかった。
今回は僕の誕生日旅行ということで、特典のウェルカムドリンクもいただけた。
最初の料理にはスパークリングワイン。
刺身には日本酒。
これがまた料理によく合って、結局おかわりしてしまった。
奥さんも美味しそうに食べている。
特に後半に出てきた信州プレミアム牛のステーキには、一層目を輝かせていた。
いくつになっても、ちょっと嬉しい
ひと通り食事を終えて一息ついた頃。
デザートと一緒に、バースデープレートを出していただいた。
こういうのは、いくつになっても少しこそばゆい。
でも。
やっぱり嬉しい。
今日は、かふぅも一緒にバーへ
レストランを出たあと、
「バーラウンジ、行ってみる?」
と奥さんと話した。
かふぅを迎えてからは、特に縁遠くなった大人の空間。
でも今日は、かふぅも一緒に入れる。
なんだかそれだけで嬉しくなった。
初めての雰囲気に、かふぅは興味津々。
僕はそんな姿を見ながら、ほろ酔い気分でもう一度ほっこりする。
奥さんはチャイナブルー。
僕はシーバスのミズナラをロックで。
久しぶりのバーの雰囲気もあってか、いつも以上に饒舌になる僕。
その横を見ると。
さっきまで興味津々だったかふぅは、カートの中ですっかり丸くなっていた。
軽井沢の夜
部屋へ戻り、寝る支度をする。
まだ少し酔いが残っていたので、夜風に当たることにした。

昼間とはまるで違う。
明かりの向こうには、ほとんど何も見えない。
静かな夜。
ドッグラン越しに広がる暗闇を眺めていると、軽井沢の自然にそのまま包まれているような気がした。
朝からずっと楽しそうだった、かふぅ。
その姿を見て笑う奥さん。
そんな二人を見ながら、何度も幸せだと思った僕。
僕の誕生日を祝ってもらうための旅行だったけれど。
今日、僕がもらったものは、
きっとそれだけじゃなかった。
夏の間、暑くてなかなか一緒に出掛けられなかったぶん、
久しぶりに3人で過ごした旅の時間が、
いつもより少しだけ愛おしく感じた。
明日は、どこへ行こうか。
そんなことを考えながら、
軽井沢の夜は静かに更けていった。
しっぽと休日メモ
今回の旅は、かふぅと一緒の軽井沢旅行。
旧軽井沢を歩いて、美味しいものを食べて、宿のドッグランで遊んで。
特別なことをたくさんした一日だったはずなのに、
振り返って一番思い出すのは、
奥さんとかふぅが歩いている後ろ姿だったり、
3人でウトウトした時間だったりする。
旅先でも、結局好きなのはいつもの僕らだった。
そんな軽井沢旅行、1日目でした。
――2日目へつづく。🐾

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