朝6時。
いつもと変わらない朝が始まるはずだった。
顔を洗って、着替えて、出勤の準備をして。
そんな、いつも通りの平日の朝。
ところが。
我が家のルーフバルコニーに、思いがけないお客さんがやってきた。
しかも、できれば一生お招きしたくない種類のお客さんだった。
スズメバチ。
……いや、ちょっと待って。
なんで、そこにいるの?
扉の隙間に、何かいる
ルーフバルコニーの扉のあたりで、何かが動いているのに気がついた。
最初は、何かの虫だと思った。
でも、よく見ると。
大きい。
そして、黄色と黒の縞模様。
……スズメバチじゃないか。
しかも、ただそこに止まっているわけではない。
扉の隙間に入り込んだかと思えば、また出てくる。
そして、また入っていく。
どうやら、その隙間が気に入ってしまったらしい。
いや。
気に入られても困る。
そこは我が家の扉なんですよ。
出勤準備と、スズメバチ
時計を見る。
朝6時を少し回ったところ。
そろそろ出勤の準備をしなければならない。
着替えもある。
身支度もある。
いつもなら、あまり深く考えることなく進んでいく朝の時間。
それなのに。
目の前には、スズメバチ。
しかも、扉の隙間を出たり入ったりしている。
このまま放っておいていいものか。
いや、よくない。
何より、家の中には絶対に入れたくない。
ただ、下手に扉を開けて刺激するのも怖い。
出勤準備をしなきゃいけない。
でも、スズメバチも気になる。
……どうする、これ。
思わず、その場で立ち尽くしてしまった。
すぐ下では、二人が眠っている
ルーフバルコニーのすぐ下には、僕らの寝室がある。
そこでは、奥さんとかふぅが眠っていた。
たぶん、二人ともまだ夢の中だ。
いつも通りの朝。
いつも通りの寝顔。
そのすぐ上で、僕はスズメバチと向き合っている。
なんだか不思議な光景だ。
いや、不思議なんて悠長なことを言っている場合じゃない。
できれば、二人が起きてくる頃には、何事もなかったような朝に戻っていてほしい。
そう思った。
開けたい。でも、開けたくない
しばらく様子を見ていたけれど、スズメバチは相変わらず扉の隙間を出たり入ったりしている。
そのうち、隙間に入り込んだまま姿が見えなくなった。
……あれ?
どこへ行った?
いや、たぶんまだいる。
さっきから何度も同じ場所に出入りしていたんだから。
でも、いつまでもルーフバルコニーにいるわけにもいかない。
出勤準備をしなければ。
家の中へ戻らなければ。
問題は、そのためには扉を開ける必要があるということ。
そして、その扉の隙間にはスズメバチがいる。
……詰んだ?
しばらく考えた末、意を決した。
まずは、スズメバチが隙間に入っているのを確認する。
そして。
恐る恐る、扉を開けてみる。
……いた。
やっぱりいた。
しかも、扉を開けたということは、当然ながら家の中への入口も開いたということだ。
これはまずい。
絶対に家の中へは入れたくない。
でも、ここで慌てて刺激するのも怖い。
慎重に。
できるだけ静かに。
でも、可能な限り迅速に。
スズメバチの横を通り抜けて、家の中へ。
そして、もう一度。
慎重に。
できるだけ静かに。
でも、可能な限り迅速に。
扉を閉める。
よし。
入れた。
閉めた。
……あれ?
扉の隙間に、何か見える。
スズメバチだ。
しかも、身体が挟まっている。
……。
いや。
そんなつもりじゃなかったんですけど。😅
とにかく、家の中には入れたくない
ここからは、正直なところ、かなり慎重になった。
相手はスズメバチだ。
下手に刺激して飛び回られたら困る。
ましてや、家の中に入ってこられたら。
考えたくもない。
スズメバチ用の殺虫剤があればよかったのだけれど、我が家にはなかったはず。
そう思っていた。
手元にあったのは、一般的な害虫用の殺虫剤。
スズメバチ専用ではない。
それでも、そのときは何とかしなければという気持ちが先に立っていた。
距離を取りながら、殺虫剤を使った。
そのあとも、すぐには近づかずに様子を見る。
しばらくして、見た範囲では動かなくなっていた。
時間にして、5分ほどだったと思う。
ただ、動かないからといって、安全になったとは限らない。
さて、どうしたものか。
……あるんかい!w
そんなことを考えていたところに、奥さんが起きてきた。
どうやら、いつもの朝が始まったらしい。
そこで、今朝の出来事を説明することにした。
ルーフバルコニーにスズメバチが現れたこと。
扉の隙間を出たり入ったりしていたこと。
家の中に入られないように、何とか扉を閉めたこと。
そして、結果的に挟まってしまったこと。
ひと通り話し終えると、奥さんが言った。
「スズメバチ用のスプレーあるよ」
……え?
あるの?
「あるよ」
……。
あるんかい!w
いや、ちょっと待って。
それ、我が家にあったの?
さっきまで、専用の殺虫剤なんてないと思い込んでいた僕。
どうしよう、どうしようと考えながら、手元にあったもので何とか対処していた僕。
その一方で、我が家にはちゃんとスズメバチ用のスプレーが存在していたらしい。
……先に知りたかった。w
いや、もちろん。
奥さんは悪くない。
そもそも、奥さんは寝ていたのだから。
知らなかったのは僕だ。
なんとも間の抜けた話である。
こうして、思いがけず存在が判明したスズメバチ用のスプレー。
動かなくなっていたとはいえ、まだ安心できなかったので、念のため使用した。
最初からこれがあると分かっていれば、もう少し落ち着いて対応を考えられたかもしれない。
それにしても。
我が家の備えを、僕が把握していなかったとは。
スズメバチだけでなく、そちらにも少し驚いた朝だった。
ここは誤解のないように書いておきたい。
今回の僕の対応は、あくまでその場で取った行動の記録だ。
一般的な害虫用の殺虫剤でスズメバチを安全に駆除できるという意味ではないし、同じ方法をおすすめするつもりもない。
スズメバチは刺激すると攻撃してくることがある。
無理に近づいたり、扉を動かして追い出そうとしたりせず、安全な場所から状況を確認し、必要に応じて専門業者へ相談する方がいい。
今回は幸い、大きなトラブルにはならずに済んだ。
ただ、今振り返ってみると、ほかにも安全に対処できる方法があったのかもしれない。
何より、スズメバチを前にして冷静に判断することの難しさを、身をもって感じた朝だった。
ようやく、いつもの朝へ
ひとまず、目の前のスズメバチが動かなくなったことを確認した。
とはいえ、まだ安心しきれない。
本当に大丈夫だろうか。
ほかにもいるんじゃないだろうか。
そんなことを考えながら、しばらく様子を見た。
そして、ようやく出勤準備へ戻る。
時計を見る。
……ああ、時間が。
いつもの朝なら、もう少し余裕があったはずなのに。
なんとも慌ただしい一日の始まりになってしまった。
翌朝、ようやく一件落着
翌朝。
念のため、もう一度様子を確認した。
スズメバチは動いていなかった。
周囲の状況にも気を配りながら、処理を済ませた。
ようやく、ひと安心。
それにしても。
まさか、新しい家でこんな出来事が起こるとは思わなかった。
虫が来ることくらいはあるだろう。
でも、よりによってスズメバチ。
しかも、出勤前の朝6時。
もう少し、時間と場所を選んでいただきたかった。
何気ない朝を、何気ないままに
今回の出来事は、あとから思い返すと少し笑ってしまう。
あの朝。
僕は出勤の準備をしなければならなかった。
でも、扉の隙間にはスズメバチがいる。
どうにかしなければ。
でも、どうしたらいいんだ。
そんなことを考えていた。
そのすぐ下の寝室では、奥さんとかふぅが眠っていた。
二人にとっては、いつもと変わらない朝だったと思う。
それでよかった。
何も起きない朝。
いつものように目を覚まして、いつものように一日が始まる。
そんな時間が、やっぱり一番ありがたい。
……とはいえ。
スズメバチさん。
次からは、できれば我が家以外でお願いします。
しっぽと休日メモ
今回は、我が家のルーフバルコニーに突然現れたスズメバチのお話。
幸い、大きなトラブルにはならずに済んだ。
でも、家の扉の隙間にスズメバチが出入りしている光景は、なかなか忘れられそうにない。
これからは、扉や窓の隙間、軒下なども時々確認しておこうと思う。
そして、もうひとつ。
我が家にどんな備えがあるのか、ちゃんと把握しておこうと思う。
まさか、スズメバチ用のスプレーがあることを知らなかったとは。
……次からは、まず奥さんに聞こうかな。w
もし同じような場面に遭遇したら、無理に自分で対処しようとせず、まずは安全を優先してほしい。
何気ない日常を、何気ないまま過ごせること。
それもきっと、幸せなことなんだと思う。
今日も我が家は、いつも通り。
奥さんとかふぅと過ごす、いつもの日常が戻ってきた。🐾

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